エレベーター点検

今でも、忘れない、娘がまだ2歳ころだっただろうかのある日、うちのマンションでエレベータ点検があった。
当時、娘は道順のこだわりが、きわめてきつかった。
毎日1回お散歩に出かけていたんだけど、お散歩といったって、娘の進む、きっちり決まった道順どおりにひとまわりまわって家に戻るだけ。
コースは厳格に決まっていた。
道を渡ったところに、ポストがあっても、そこに手紙を投函することも出来なかった。
今から思えば、あんなに小さかったのだから、抱きかかえて、ポストまで行けなかったんだろうかと思ったりもするのだけど、でもやっぱり行けなかった。死力をつくしてあばれるので、そう簡単にはいかなかったし、そうまでして、道順を変える気力も私には残っていなかった。
さて、そんなとき、エレベータ点検の最中に、家に戻った。
当時、娘はエレベータに乗るのを道順としていたので、当然エレベータに乗ろうとした。
点検のおじさんが乗ったエレベータが行ったり来たりしていたので、エレベータが着くたびに乗ろうとするのをとりおさえ、たった2階まで登るんだから、なんとか階段で行こうとしたが、どうしてもだめだった。
1階のエレベータの前で何十分もみあってあばれていただろうか。。。
あきれたエレベータ点検のおじさんが、「ほら、エレベータに乗りたくてかんしゃくを起こしてるんだろ?そんなに乗りたいんだったら乗ってもいいよ」と言って乗せてくれた。
「何階?」と聞かれたので「2階です」とわたしは申し訳なさそうに答えた。
それを聞いたおじさんは
「なにぃ~2階くらいまで自分の足で歩けっ。今の親はこんなだから、みんな足が弱るんだ。」
とかなんとか説教をはじめた。
当時は、「この子はどっかおかしい。。。ひょっとしたら障害児かもしれない」とおもいつつ、まだ検査も何も受けてない頃で、いまひとつ自分でも確信がもてず、
「すいません、この子は障害児でうまく話が通じないのです。。。」という言葉を飲み込んで
「どうも、すいません」と謝りながら、2階で降りて、家の中に入った。
家から一歩出ると、こうやってほうぼうでしかられてしまう。
自分でも泣きたくなってしまうくらい困っているのに。。。。
家に着くと、怒りが込み上げてきた。
どうして、階段を登れないんだよ!と娘をつきとばした。
ただひたすら悲しかった思い出として今でも鮮烈な記憶に残っている出来事だ。
いまだにエレベータ点検の札がでているたびに思い出す。